新学術領域研究
「第一原理系励起状態の多体論と高転移温度超伝導物質デザイン」
文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」の一環として、平成22年度から26年度にかけて、「コンピューティクスによる物質デザイン:複合相関と非平衡ダイナミクス」(領域代表:押山淳東京大学工学部教授)という研究プロジェクトが進行中です。この新学術領域では、計算科学と計算機科学を学融合させた、従来の計算物理学の枠を打ち破るコンピューティクスという学問領域を確立し、それにより量子論の第一原理に立脚したアプローチを革新的に飛躍させ、さらに実験研究者との有機的連携により、物質デザインの根幹である複合相関と非平衡ダイナミクスの解明・予測を行うものです。 この新学術領域は11の計画研究から構成されている。そして、そのうちの一つが「第一原理系励起状態の多体論と高転移温度超伝導物質デザイン(A03-10)」と題するプロジェクトであり、当研究室が中心となって遂行する。 |
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強力な多体理論手法であるグリーン関数法で第一原理系の多電子問題を励起状態も含めて忠実に解くことを目指す。具体的には、下図に模式的に示した自己無撞着なGW¥Gamma法を開発・発展させて、正常状態だけでなく超伝導状態もそれと整合的に取り扱い、その転移温度Tcの信頼に足る定量的予測を行う。より具体的な研究目的は次の2つである。 (a) 励起状態の交換相関効果と正常状態での準粒子像の詳細: 自己無撞着法、および、ワード恒等式を満たし、かつ、交換相関核を含む頂点関数¥Gammaを組み込んだGW¥Gamma法の超並列計算コードを開発して、固体中の電子の(動的かつ非局所的な)自己エネルギーを正確に計算し、準粒子像の適否(とりわけ、フェルミ流体とラッティンジャー流体の相違)を含むその詳細を解明する。そして、得られた計算結果に基づいてARPESの測定原理を検証する。 (b) 超伝導転移温度Tcの定量的研究: 約30年前に高田はエリアシュバーグ理論から出発してTcの第一原理計算手法を開発した。(最近、それがCaC6などの黒鉛層間化合物に見事に適用された。)その手法に現れるギャップ方程式は密度汎関数超伝導理論に現れるそれと全く同じであるので、これら2つの理論を比較・検討しつつ、それらを超えた理論を建設して、それに基づいて超伝導の微視的機構の本質に迫る。そして、得られたTcの理論情報を超伝導体作成の現場に伝えると共に、逆に、作成現場の知恵を数値情報化して、理論実験間のシナジー効果で室温超伝導の夢を追う。 ・キックオフミーティング(2010年9月18日)の参考資料 |
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研究体制は次の通りである。 ・研究代表者 高田康民(東大物性研・教授) 研究総括、Tcの第一原理計算手法の考案 課題(a) 励起状態の交換相関効果と正常状態での準粒子像の詳細 ・研究分担者 前橋英明(東大物性研・助教) GW¥Gammaによるラッティンジャー流体解析 ・研究員(高田研平成23年度採用予定) GW¥Gammaコード開発 ・連携研究員 大野かおる (横国大工・教授) GW計算とGW¥Gammaとの比較・検討 ・連携研究員 斎藤晋(東工大理工・教授) GW計算とGW¥Gammaとの比較、手法開発 ・研究分担者 前園涼(北陸先端大情報科学・講師) DMCによる交換相関核の構成 ・連携研究員 吉澤香奈子(東大理・特任研究員) STLSによる交換相関核の構成 課題(b)超伝導転移温度Tcの定量的研究 ・研究員(高田研平成23年度採用予定) Tc計算 ・研究分担者 前橋英明(東大物性研・助教) 超伝導GW\Gamma解析理論の構成 ・研究分担者 白井光雲(阪大産研・准教授) DFT計算、超伝導材料開発指針提案 ・連携研究員 是常隆(東工大理工・助教) エリアシュバーグ理論によるTc計算 ・連携研究員 秋光純(青学大理工・教授) 軽元素高Tc超伝導体創成 ・連携研究員 春山純志(青学大理工・准教授) 炭素系高Tc超伝導体創成 ・連携研究員 上田寛(東大物性研・教授) 超伝導物質の開発と特性評価 |